樹木を伐採する場面を撮影し、文字や音声とともに編集、週1本のペースで動画配信サイト「ユーチューブ」にアップする。和水町の松下元気さん(31)は2021年1月、同町の林業会社に就職し、情報発信を担っている。
18年9月、地域おこし協力隊員として同町に赴任した。北海道出身。東京でバンド活動をしていたが、結婚して子どもが生まれたことを機に、妻の出身地である玉名市に近いということで移住を決めた。
地域活性化に興味を抱いて協力隊に応募したが、配属当日、役場職員から言われた言葉は衝撃だった。「じゃあ、あとはよろしく」。担当は情報発信だったが、町からは仕事について具体的な指示はないまま。地域の有力者や情報通の住民などの情報もなく「全てが白紙。ゼロからのスタートだった」と振り返る。
さらに情報発信の担当にもかかわらず、携帯電話やパソコンなどの通信機器、カメラの貸与もなかった。役場の担当者が変わって配備されるまでの1年間は、インターネットや電話の通信料を毎月1万5千円ほど自腹で負担した。「状況は改善していったが、担当者次第なんだと痛感した」と松下さん。
松下さんは協力隊における“ゴール”が見えず、次第に3年間の任期を全うすることは考えられなくなった。そんな中、活動中に出会った林業会社の社長に誘われたこともあり、任期途中での就職を決意した。
協力隊を担当する和水町まちづくり推進課は「以前は担当者次第という部分もあったが、現在は業務を明確化している」という。
県内の他自治体で採用された男性は、赴任直前になっても自治体側から連絡がなかったため問い合わせたところ、一方的に「採用を延期する」と通告。数週間後に正式に採用が決まったものの、配属先を訪れると所属長から「ここには来なくていい。あなたが何をしようと関知しない」と言われた。男性は仕事も与えられず、どうやって毎日過ごそうかと悩んだあげく、数カ月で辞任した。
協力隊の活動費は年間約200万円だが、男性によると「あなたの活動費でコピー機を買った」「活動費を流用できないか」などと言われた別の隊員もいたという。
ある自治体関係者は「行政側は体のいい労働力、隊員側は安易な就職先と思ってくる人もいる。双方の思いが擦れ違い、うまくいかないケースがある」と打ち明ける。
先の男性は「協力隊は、よそ者の視点を地域おこしに生かす素晴らしい取り組みだが、周囲によき協力者がいてこそ本来の仕事ができるもの。行政は現場レベルでもう一度、その趣旨にたち返ってほしい」と注文を付けた。(樋口琢郎)
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制度開始から14年目を迎えた地域おこし協力隊だが、任期途中で辞める人が後を絶たない。背景に何があるのか。現状と課題を探った。
からの記事と詳細 ( 地域おこし協力隊員に赴任当日、役場職員「じゃあ、あとはよろしく」 携帯やパソコンの貸与もなく【よそ者生かして 地域おこし協力隊の今 】|熊本日日新聞社 - 熊本日日新聞 )
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