2022年04月03日07時14分
福島、栃木、群馬、新潟4県にまたがる尾瀬国立公園に設置されたトイレが存続の危機にある。長年、維持費として利用者に求めている協力金の支払いが低調なためだ。事態を打開するため、公園を管理する尾瀬保護財団(前橋市)が昨年度、「ナッジ(行動経済学)」の理論を活用した実証事業に取り組んだところ、人の目を載せたポスターの掲示により支払額が増える傾向が見られた。
自然環境の保護が重視される中、トイレの協力金回収問題は、国立公園など多くの人が訪れる地域で共通の課題となっている。ナッジとは英語で「そっと後押しする」という意味。人の「ついやりたくなる」習性に着目し、工夫を凝らすことで、低コストで望ましい行動を促す政策手法だ。
尾瀬公園内は下水道が整備されていないため、トイレの汚物を乾燥処理した上で、空輸で搬出している。財団が管理するトイレの維持費は年間で約1000万円。トイレの入り口付近に箱を置き、利用者に対し、1回につき協力金100円を入れてもらう仕組みを取っているが、支払うのは利用者全体の3割前後にとどまっていた。
実証は昨年9~10月に実施。まず、子どもがこちらを見つめる写真などを掲載したポスターをトイレの入り口付近に20日間掲示した。歌舞伎役者の目が描かれた防犯用ステッカーもあるように、「人の目」はルール順守効果が期待される。
後半の20日間は、協力金箱を二つ並べて置き、それぞれの箱に異なる尾瀬の風景写真を張って好きな方にお金を入れてもらう投票形式にした。「好きな風景を選ぶ楽しさで、思わず100円玉を入れたくなる」効果を狙った。
昨年8月時点の利用者1人当たりの支払額は平均24.8円。前半のポスター掲示の結果、支払額は同月より10円増えたが、後半の投票形式では逆に2.3円減った。
財団の田中佑典前事務局長(32)は「利用者に『見られている』感覚を持ってもらうことが有効との仮説が得られた」と手応えを見せる。一方、投票形式では「『払わないといけない』という義務感が薄れたのでは」と分析する。
財団は今年度も実証事業を続ける方針で、協力金問題の解決に向けて知恵を絞る考えだ。
からの記事と詳細 ( 尾瀬公園のトイレを救え 人の目ポスターで協力金アップ―「ナッジ」理論で実証・保護財団 - 時事通信ニュース )
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