就職情報サイト「リクナビ」を運営するリクルートキャリアが就活生の内定辞退率を予測したデータを企業に販売し物議を醸している件で、個人情報保護委員会は8月26日、同社に対して、経営陣を含む全社的な意識改革などの措置を講じるよう勧告した。9月30日までに具体的な措置内容を報告するよう求めている。
リクナビのプライバシーポリシーに不備があり、一部の就活生から事前に同意を得ていなかったことなどを踏まえ、委員会はリクルートキャリアの対応が個人情報保護法に反すると問題視している。
当社は「同意を得ていた」と説明、実際は「漏れ」
リクルートキャリアは2019年3月〜7月末まで、就活生のリクナビ上での行動履歴などを基に内定辞退率を予測し、38社に提供。日本経済新聞が8月1日付で報じると、ネット上では「分析結果を合否判定に使っているのではないか」「学生から十分に同意を得ていないのではないか」などと批判が続出した。
リクルートキャリアは、1日時点では「『分析結果を合否判定に活用しない』と合意した企業にのみデータを提供していた」と釈明。サービスの提供を始めた3月にプライバシーポリシーを改訂し、「学生がリクナビに登録する際に、プライバシーポリシー上で同意を得ていた」と説明していた。
しかしその後、同社がリクナビ上に複数設けているプライバシーポリシーを調べた結果、一部で記述漏れが判明。全ての文面に「行動データを企業に提供する場合がある」などと追記したはずだったが、一部反映が漏れ、7893人の学生から同意を得ていなかったという。同社は、5日にサービスを廃止すると発表した。
「不適切な管理体制だった」と指摘
個人情報保護委員会は26日、「リクルートキャリアが大量に取り扱う個人情報は、求人企業の採用活動に関わる情報であり、リクナビの会員となった学生の人生をも左右しうるため、適正な取り扱いについて重大な責務を負っている」とコメント。
だが「(プライバシーポリシーの変更という)個人データの取り扱いに重大な変更があったにもかかわらず、法令順守などに適切な判断を行っていなかった」と指摘。「(リクルートキャリアは)顧客企業との個人データのやりとりについて、適切な検討を行っていない」とも非難した。
また、プライバシーの改訂時に漏れがあったのは「不備を予防、発見、修正する体制がなかったため」と指摘。委員会が同社にプライバシーポリシーに関する照会を求め、点検が行われるまで「この状態が放置されているなど、不適切な管理体制だった」という。
個人情報保護法の第20条では「個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じなければならない」、第23条では「(原則として)あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない」──とあるが、委員会はリクルートキャリアがこれらの規定に違反していると問題視した。
「経営陣をはじめ全社的な意識改革」求める
こうした事態を踏まえ、委員会は同社に対し「適正に個人の権利を保護するよう、組織体制を見直し、経営陣をはじめとして全社的に意識改革を行うなど、必要な措置をとること」を勧告。9月30日までに具体的な措置内容を報告するよう要請した。
今後検討する新サービスについても、法に基づいて適正に個人データを取り扱うよう検討、設計、運用を行うことを求めている。
また、同委員会が公開する「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」(通則編、PDF)では、プライバシーポリシーなどで「本人(=サービス利用者)が同意するかを判断するために必要と考えられる合理的かつ適切な範囲の内容を明確に示さなければならない」と定めているが、リクルートキャリアは不十分だったと指摘。そうした内容を明確に示すよう指導した。
委員会は引き続き調査を実施しており、必要に応じて追加の措置を講じるという。
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2019-08-26 10:04:00Z
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1908/26/news111.html
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