ソウルから東京まで空路で2時間。かくも近い隣国同士ながら、首脳による二国間訪問は11年3カ月ぶりという。
韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領がきのう来日し、岸田首相と会談した。今度こそ首脳外交の停滞に終止符を打ち、頻繁に顔をつきあわせて互恵の未来を語り合うべきだ。会談をその起点としたい。
往来を阻んできたのは両国間に横たわる歴史問題だ。とりわけこの数年は、韓国司法が日本企業への賠償を命じた徴用工問題で対立が深まった。この難題に尹政権は、韓国政府傘下の財団が賠償分を肩代わりする解決策を発表した。
それからわずか10日後に実現した会談で、首脳同士が行き来する「シャトル外交」の再開を誓い合ったのは当然だ。これまで関係悪化のたびに止まってきたが、これからは危機の時こそ首脳が打開の先頭に立つべきとの認識を新たにしたい。
経済安全保障の枠組みを新設することでも合意した。半導体生産などそれぞれ強みを持つ分野で対抗しあうのではなく、協働する。そんな新次元の関係を多方面で目指してほしい。
一方で楽観は禁物だ。徴用工問題の解決策をめぐっては韓国国内で反対意見も目立つ。韓国政府と財団は、ねばり強く説得を続けてもらいたい。韓国世論に理解を広げるには、日本側の建設的な関与も欠かせない。財団への寄付について日本政府は表向き、各自の判断に委ねるとしており、被告企業を含む日本企業の柔軟な対応を望む。
徴用工問題の事実上の報復措置として強化していた対韓輸出規制について、日本政府はきのう、一部解除を表明した。遅きに失した判断だが、全面撤回に向けた手続きを急ぐべきだ。
歩み寄りに向け日韓の背中を押した要因のひとつは、厳しさを増す安全保障環境だ。両国の「特別な日」を狙い撃ちするかのように北朝鮮は大型ミサイルを日本海に向けて発射した。
北朝鮮ミサイルなど軍事機密情報を円滑に共有する協定の安定運用や、安全保障対話の5年ぶりの再開で合意したのは時宜を得ている。日韓の修復を日米韓3カ国の連携強化につなげていく必要がある。
とはいえ力だけで北朝鮮の行動は変えられない。軍事偏重にはやる米韓の「抑え役」を日本が果たせるかも問われよう。
米中の緊張が高まり、ウクライナ侵攻を続けるロシアが中国や北朝鮮に接近する新たな情勢の中で、日中韓の意思疎通も東アジアの安定を守るために欠かせない。
単なる関係修復にとどまらない、平和と繁栄に資する日韓の新たな関係を築いてほしい。
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