日本は中国とは「対立」と「協力」のバランスを保ちつつ、国益の最大化を目指す難しい政策運営を求められる。日中は安全保障で意思疎通を推進し、建設的・安定的な日中関係の構築を目指すことで一致しており、新たな共存の道を探りたい。
米中と日中の首脳会談が2022年11月に開かれ、対話の継続で一致し、緊張緩和へのスタートラインに立った。だが中国を刺激する日米の政策決定が相次ぐ。米国は先端半導体や製造装置の対中輸出規制に日本とオランダも取り込み、中国による先端半導体の開発を遅らせようと試みる。日本は防衛3文書を改定し、「懸念」としていた安全保障上の中国の位置付けを「最大の戦略的な挑戦」に変更し、5年で43兆円の防衛費と「反撃能力」の装備を決めた。
日本にとって中国は半導体製造装置の最大の顧客であり、どの水準の装置から輸出を規制するのか、経済安保と国益の両面から慎重な判断が求められる。また日本の防衛力強化は、台湾有事が日本の安保に直結するだけにやむを得ない決断だった。日本は領土や人権問題など中国側のレッドライン(越えてはならない一線)を越えずに、軍事・経済両面の安保に抵触しない分野で関係を深めていきたい。
中国はインドとともに、西側諸国によるロシアへの経済制裁の抜け道になっている。ただ戦況劣勢のロシアとの距離感に中国は苦慮しており、国際的な孤立は回避したい意向だ。習近平国家主席はロシアに対し、ウクライナとの対話による解決が重要だとの考えを示している。また習氏はロシアがウクライナで核兵器を使用することを許さないとの見解でも米国および日本との首脳会談で一致しており、ロシアに影響力を持つ中国が最悪の事態を回避する抑止力となることを期待したい。
日中は人口減や環境問題など共通する課題が少なくない。今春をめどに両国の防衛当局を結ぶホットラインも開設される。両国の信頼醸成により不測の事態を回避しつつ、非安保分野で新たな互恵関係を模索することが日本の国益に資するはずだ。
からの記事と詳細 ( 社説/国益を考える(2)中国と対立・協力の均衡維持を - 日刊工業新聞 )
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