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「トヨタ流人づくり 実践編 あなたの悩みに答えます」では、日本メーカーの管理者が抱える悩みに関して、トヨタ自動車流の解決方法を回答します。回答者は、同社で長年生産技術部門の管理者として多数のメンバーを導き、その後、全社を対象とする人材育成業務にも携わった経歴を持つ肌附安明氏。自身の経験はもちろん、優れた管理手腕を発揮した他の管理者の事例を盛り込みながら、トヨタ流のマネジメント方法を紹介します。
悩み
先日、小島プレス工業(愛知県豊田市)がランサムウエア(身代金要求ウイルス)の攻撃を受け、トヨタ自動車の完成車工場が止まった事件がニュースになりました。驚いたのは、小島プレス工業が独立系だというのに、トヨタ自動車が復旧支援に動き、転注(調達先を別の企業に切り替えること)もしないと報じられていたことです。なぜそこまでするのでしょうか。トヨタ自動車の考えを知りたいです。
編集部:小島プレス工業は、トヨタ自動車が創業間もない頃から取引している会社で、今なお、ほぼトヨタグループとしか取引していないとのことです。
肌附氏—私自身はトヨタ自動車在籍時に直接仕事で関わる機会はありませんでしたが、小島プレス工業のことは知っています。トヨタ自動車の要求とあれば、かなり頑張って応えてくれる会社として、当時からトヨタ自動車社内で有名でした。
編集部:トヨタ自動車がサイバー攻撃を受けた小島プレス工業の支援に動くという話を聞いた時は、小島プレス工業はトヨタグループの企業なのかと思いました。実際は独立系の部品メーカーです。資本関係がないのに、トヨタ自動車が支援に動くというのが不思議です。
肌附氏—トヨタ自動車は長年取引している協力会社を大切にする会社なのです。役員同士を含めた人間関係を築いている場合も多く、私も協力会社の社長から「英二さん(トヨタ自動車5代目社長の豊田英二氏)とゴルフでご一緒しましてね」とか「あの役員を知っている」とかいった話をよく聞かされたものです。そうした協力会社は小島プレス工業に限らず、愛知県豊田市や刈谷市辺りにたくさんあります。
編集部:しかし、企業間の取引はあくまでもビジネスです。本来なら、例えば1円でも低コストな部品を提供する企業に発注するようなシビアな経営判断を下すのが自動車メーカーとしては当然とも思います。ましてや資本関係もないのですから。やはり、トヨタ自動車が協力会社に支援に動く理由が理解できません。
肌附氏—トヨタ自動車にとっては、協力会社の1つひとつが一緒に良いトヨタ車を造り、共に成長・発展する「運命共同体」のような感じなのです。さすがに協力会社全部とは言いません。創業間もない頃から取引してきた小島プレス工業のような会社は別格としても、長年付き合って苦労を共にしてきた協力会社との間には、「深い絆」とも呼べる関係をトヨタ自動車は構築しているのです。
そうした協力会社に対し、トヨタ自動車は「絶対に倒産させてはならない」と考えています。そのため、生産現場への改善指導はもちろん、経営が厳しくなると経営指導もします。トヨタ自動車から人を派遣し、経営が軌道に乗るまで支援を続けることも珍しくはありません。トヨタ自動車から派遣された社員の中には、「黒字にするまで帰ってくるな」と上司に厳命される人もいるほどです。
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