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Tuesday, January 4, 2022

日米軍事協力の深化、背景に中国の脅威 - Wall Street Journal

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 【八戸】それは、通常であれば日米がそれぞれ独自で行うような軍事訓練だった。昨年12月のある朝、米国の兵士と日本の自衛隊員らはカモフラージュを施したテントに一緒に入り、一方の国の航空機と、もう一方の国のミサイル発射装置を使って、不特定の国の艦船を想定した攻撃訓練を行っていた。その国とは、中国であったかもしれない。

 日本北方の海岸沿いの森の中では、計20人以上の米海兵隊員と自衛隊員が前屈みになり、地図とノートパソコンをのぞき込んでいた。その時突然、海兵隊の厳重に管理されたウェブページ上に、「交戦準備態勢に入れ」とのメッセージが表示された。

 これらは、地対艦ミサイルによる海上の標的の破壊を想定した米海兵隊と日本の自衛隊による初の合同軍事訓練だった。この演習では、日米双方のミサイル、航空機、艦船、レーダーを運用するため、両国の士官らが肩を並べて指揮に当たった。

日米共同訓練に使用された可動式の米海兵隊レーダーステーション

Photo: Alastair Gale/The Wall Street Journal

 海兵隊側のミサイル攻撃の連携作業を担当したベン・リーディング少佐は「インド太平洋に関しては、広大な区域での行動を想定している」とし、「同盟諸国と協力し、できる限り多くの戦力を互いに持ち寄り、戦わなければならない」と語った。

 地域紛争への懸念、特に台湾奪取を目指す中国が実際に行動に移すのではないかとの懸念が、日米間の軍事連携深化の原動力になっている。

 もっと広い範囲で見ると、アジア太平洋地域の米国の同盟国や友好国は、中国の行動抑止のため以前よりも大きな役割を果たしている。オーストラリアは、長距離ミサイルを含むハイテク防衛計画に1800億ドル(約20兆7500億円)以上を投じ、米国の技術を採用する原子力潜水艦の建造計画を進めるなど、国防能力を高めている。また台湾はミサイルや艦船などへの向こう5年間の軍事支出拡大を計画している。

 10年ほど前から中国は、日本が支配する東シナ海の島々の領有権を主張しており、これが日本側の懸念を引き起こしてきた。日本は2018年に、海兵隊をモデルとする水陸機動団を創設した。

 今回の実地訓練とは別に最近行われたコンピューター上の軍事演習に参加したカイル・エリソン准将などの米軍当局者は、日本の部隊が迅速に展開して、敵に応じる能力に向上が見られたと述べる。

日米共同訓練で使用された自衛隊のレーダー

Photo: Alastair Gale/The Wall Street Journal

 エリソン准将は、「われわれの抑止能力には、それを1対1ではなく、1対2、1対3、あるいは1対4にすることが含まれる」と述べた。同准将は、西太平洋で米国を巻き込んだ衝突が起きた場合に前線に配備される公算が大きい部隊の副司令官を務める。太平洋の島をめぐる衝突に備えることは現在、海兵隊の主な焦点となっている。

 台湾をめぐる衝突が起きても、日本には平和憲法によって課される制限があるため、日本が自国の領域外で戦う可能性は低い。しかし、日本の指導者たちは、台湾で衝突が起きれば、それが付近の日本の島々に飛び火することを想定しており、米国と連携してそれに備える必要があると述べている。

 日本の南西諸島に配備されている対艦ミサイル部隊は、米国を追い払うために西太平洋に艦船を送り込もうとする中国の試みに対抗するのに役立つ可能性がある。

 政策研究大学院大学の道下徳成副学長は、台湾海峡で戦争が起きた場合、日米共同作戦にとって最も重要な目的の一つは、中国軍が南西諸島を横切る前に軍の動きを止めることだと述べる。

 中国の外務省および国防省にコメントを要請したが、返答はなかった。

 米当局者によると、同盟国との連携強化は2022年初めに公表予定の米国の新国防戦略の指針となっているアイデアの一つだ。ロイド・オースティン国防長官は今月、岸信夫防衛大臣と会談する予定だ。

日米共同訓練で使用された自衛隊の対艦ミサイル

Photo: Alastair Gale/The Wall Street Journal

 米国とアジアの主要同盟国との間では近年、在留米軍の経費をめぐる緊張が生じていたが、現時点では緊張は解消されているように見える。日本政府は最近、約5万人に上る在日米軍駐留経費の年間負担額を引き上げることに同意した。日本は2022年度から5年間で年平均18億5000万ドル(約2100億円)を支払う。今年度比で4.6%増だ。韓国も昨年、米軍の駐留経費の負担額を引き上げることで合意した。

 「レゾリュート・ドラゴン」として知られる日米共同訓練は最近、約2650人の米海兵隊員と1400人の自衛隊員が日本国内の9カ所の訓練地域に展開して行われた。演習のための合同司令部では訓練の様子をモニターしたり命令を出したりするため、米国と日本の参加者が並んで席に着いていた。

 艦船攻撃訓練で日本側は三菱パジェロのベース車両に搭載したレーダーを使って目標を確認。米海軍のP-8哨戒機は、この目標が敵であることを確認するため、対象海域を飛行した。日本側部隊は、合同司令部からの目標に関する情報を受けたあと、ミサイルランチャー搭載の2台のトラック車両を木の陰から出し、ミサイル発射筒の角度を上げ、発射までのカウントダウンを行った。ただし、今回の訓練には実射は含まれていなかった。

 元米海兵隊大佐で日本側とのリエゾンオフィサー(連絡将校)を務めたこともあるグラント・ニューシャム氏は、中国艦船を共通目標に想定した海兵隊と自衛隊の合同訓練は連携の面で目覚ましい進展を示すものだと指摘。だが日米は断続的な合同訓練ではなく、恒常的な作戦上の関係を築くために合同司令部を設置すべきだと語った。

 ニューシャム氏はまた、自衛隊の水陸機動団の隊員が周辺地域で展開する際には海兵隊部隊の一部となるべきだとの見方を示した。

 最近のコンピューター上の軍事訓練で浮き彫りになった課題は双方の一体化をさらに深化させることだ。日本側幹部はある会議の際、米側が使用した難解な用語の説明を何度も求めていた。

 当時、水陸機動団の団長を務めていた平田隆則・陸将補(12月22日付で退官)は、日米の間でコミュニケーションは問題ではなかったと述べた。

 平田氏は、米海兵隊の新たな戦略に沿う形で南西諸島にミサイル発射台や軍事拠点を展開しているとした上で、「われわれは様々な分野でもっと連携を強化すべきだ」と述べた。

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