ろう者・難聴者と健聴者が協力してゴールを目指す体験型の謎解きゲーム「異言語脱出ゲーム」が注目されている。異言語とはろう者らの手話と、健聴者が使う音声言語を指す。開発したろう者の菊永ふみさん(35)は「異なる者と向き合う面白さを分かってほしい」とゲームに込めた思いを語る。新型コロナウイルス禍の中、今月、オンラインでのイベントが始まった。 (石原真樹)
◆「壁」感じていたけど…謎解きゲームに没頭して
菊永さんは、聴覚障害のある子どもが暮らす福祉型障害児入所施設「金町学園」(東京都葛飾区)の職員。毎年、外部との交流会を開いてきたが、会の間は子どもと来所者のコミュニケーションがあっても、終わると別々の輪ができる光景が気になっていた。
健聴者の友人が楽しそうにしゃべっていても理解できない。深く話したくても、簡単な意思疎通しかできない。ろう者の自分がずっと感じてきた壁だった。
転機は2015年2月、片言の手話ができる健聴者の友人に誘われ、謎解きゲームに初めて参加した時だった。
謎解きゲームはチームで謎を解いて進む体験型イベントで、若者などから人気を集める。菊永さんは友人のほか、手話のできない健聴者2人とチームを組んだ。身ぶり手ぶりや友人の手話通訳を頼りにゲームに没頭し、あっという間に1時間が過ぎた。「みんな一体になって謎解きを楽しめる。こんな素晴らしいコンテンツがあるなんて」
◆いろんな方法で「壁」と向き合う機会に
この体験を聞いた浜崎久美子園長(76)に「交流会でやってみたら」と背中を押され、夜勤明けや休日を使って1カ月で異言語脱出ゲーム「ろうの国からの脱出」を制作。学園が「ろうの国」という設定で、手話や、50音を指で表す指文字を使わないと解けない謎をちりばめた。
交流会でやってみると「手話を教わる来所者も教える子どもも必死。集中している姿が見られてすごく良かった」。ゲームは話題を呼び、企業や自治体から研修の依頼や協働企画が舞い込み、18年、一般社団法人「異言語Lab.」を設立した。メンバーは7割がろう者、3割が健聴者だ。
これまでに発表したゲームは10作。ゲームを作るうちに、「壁を取り払いたい」との思いは「壁を低くしたり、よじ登って向こう側を体験したり、いろんな方法で壁と向き合えれば良い」に変わった。「ろう者は見る力や身体で表現する力、健聴者は聞く力、言葉で表現する力がある。それぞれが持つ力を最大限に発揮することで多様性豊かな社会になる」と感じている。
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