Pages

Thursday, September 24, 2020

インドが海洋進出にかじ、対中共闘で国際協力強化 - Wall Street Journal

インド海軍は世界有数の規模を誇る

Photo: francis mascarenhas/Reuters

 国境沿いでの中国との衝突を受けて、軍事力で見劣りするインド政府が従来とは異なる対応を模索し始めた。世界で影響力を強める中国に対抗するため、対中共闘を目指す他国との協力を深め、海上での軍事能力を重視する戦略へとシフトさせている。

 インドは、中国にとって石油・ガスの調達先である中東、および主要輸出市場である欧州を結ぶインド洋の航路上にちょうど位置している。中国の海軍は急激に拡大しているものの、まだ遠洋で展開する能力は限られており、自国の裏庭では米国と対峙(たいじ)しなければならない状況にある。

 インド海軍の元トップ、アルン・プラカシュ氏は「北部の国境では、膠着(こうちゃく)状態に持ち込むのがせいぜいだ。だが、海では中国に対して優位に立てる」と話す。「海上での軍事力を誇示することで、ぜい弱な立場にあることを中国に思い知らせることができる。つまり、われわれは中国の輸出やエネルギー調達にいつでも手を出すことが可能で、中国経済を脅かすことができるとのメッセージだ」

 インドはここにきて、米国などの友好国と海軍の合同演習を強化している。一方で、新たな艦艇を建造するとともに、インド洋の海運交通に目を光らせるため、沿岸に監視を担当する前哨基地のネットワーク構築を進めている。

 インドは核保有国であるパキスタン、中国と長距離にわたって国境を接しており、軍事戦略も従来、国境警備に重点が置かれてきた。しかしながら、インド指導者らはここ10年で、インド洋を重視する姿勢へと傾いている。背景には、国際貿易の拡大に加え、インドが自国の影響下にあるとみていた南アジアの小国に中国が進出し始めたことがある。

 インドのスブラマニヤム・ジャイシャンカル外相はインタビューで「インドは海洋大国で、インド洋のちょうど中心に位置している」と指摘する。「過去数年にも、この点に十分注意を向けていないとの意識はあった。貿易の拡大に伴い、輸入も増えており、単に国家安全保障の観点だけでなく、広範な地政学的観点からも、海洋の相対的な重要性が高まった」

 国際貿易でインド洋が果たす役割を強調しすぎるということはない。世界の海上貿易の75%、世界の石油供給の半分はインド洋を通過する。東のマラッカ海峡や、西のホルムズおよびバブ・エル・マンデブ海峡などの難所では、軍事衝突が発生すれば海上輸送の大半が危険にさらされる。

 中国がインド洋へと着実に進出してくるのに伴い、米国や地域の友好国に対するインドの見方は根本的に変化した。冷戦時代に「非同盟運動」を主導してきたインドは、かつてすべての外国勢力に対し、周辺から軍事プレゼンスや基地を排除するよう求めてきた。

 だが現在では、インドの南端から南西1100マイル(約1770キロ)程度に位置するディエゴ・ガルシア島にある戦略基地を米国が維持することにも警戒感はない。インドは米国、フランス、オーストラリア、日本などとの軍事・外交協力を着実に強化している。これらの国々はいずれも、インドと同様、アジアで覇権を握ろうとする中国に対する懸念を共有している。

 7月には、インドのアンダマン諸島とニコバル諸島の近辺で、インドの軍艦と米軍のニミッツ空母打撃群が共同演習を実施した。現場はマラッカ海峡へのアクセスを守る要所だ。米軍は南シナ海にもニミッツ空母打撃群を派遣し、同海域で実効支配を進める中国をけん制している。

 前出のジャイシャンカル外相は「世界は変化した。率直に言って米国はかつて懸念要因であり、脅威でさえあった。現在ではパートナーだと認識されている」と語る。「インド洋で今起こっているのは、政治的に互いに容認できる関係にあり、世界全体の視点から懸念を共有する国々の利害がここに集まりつつあるということだ」

 インドやパートナー国の一部は、こうし協力体制は必ずしも中国への対抗を念頭に置いたものではないと主張しているが、中国が国家主義的な主張を強め、周辺諸国を力で抑え込もうとする姿勢を鮮明にしていることが結束を促す原動力となっている。

 インドは2016年、米政府との間で、米印海軍による港湾施設の相互訪問の促進や共同演習の実施を定めた合意を締結。非同盟時代からの方針を転換した。インドはそれ以降、フランスや韓国、オーストラリアとも同様の合意を結び、今月には日本とも締結した。

 インドは空母1隻を展開するほか、新たに1隻を建造中だ。この他、30隻近い大型水上艦や戦略・戦術潜水艦の船隊を保有している。一方、中国海軍は、空母2隻を含め90隻前後の大型水上艦を保有。これに加え、より速いペースで高性能の新型艦艇を建造中だ。両軍の格差は向こう数年にさらに開く公算が大きい。新型コロナウイルスの流行から、中国経済は持ち直している一方で、インド経済は縮小しているためだ。

 それでも、インドが同志国との新たな提携関係を構築できれば、中国との格差を解消する一助となろう。米クレアモント・マッケナ大学のミンシン・ペイ氏は、インドは中国に関して「戦術上は弱い立場にあるが、戦略的には優位にある」と指摘する。「インド政府は大方の想定よりもはるかに大胆な行動に出た。長期的には勢力バランスがインドに有利な方向へと変化する可能性が高いと確信しているからだ」

関連記事

Copyright ©2020 Dow Jones & Company, Inc. All Rights Reserved. 87990cbe856818d5eddac44c7b1cdeb8

Let's block ads! (Why?)



"協力" - Google ニュース
September 25, 2020 at 08:28AM
https://ift.tt/2Ev1MHF

インドが海洋進出にかじ、対中共闘で国際協力強化 - Wall Street Journal
"協力" - Google ニュース
https://ift.tt/2uyu2V7
Shoes Man Tutorial
Pos News Update
Meme Update
Korean Entertainment News
Japan News Update

No comments:

Post a Comment