朝鮮戦争が1950年6月25日に勃発して今年で70年。「連載・朝鮮戦争70年 日本の『戦争協力』」で、平和憲法ができて間がない日本における「戦争協力」の実態をみてきた。最終回の本稿では、朝鮮戦争時における国鉄の戦争協力(「朝鮮戦争と兵隊・武器・弾薬を輸送した旧国鉄の戦争協力」参照)に対する日本国内での抵抗運動について、在日の詩人として活躍する金時鐘(キム・シジョン)に焦点をあててたどってみたい。以下、2020年3月の筆者によるインタビューや時鐘の自伝、新聞記事などをもとにする。
「皇国少年」として育った金時鐘
時鐘は世界恐慌がはじまる1929(昭和4)年1月17日、現在の北朝鮮元山市に生まれた。小学校に入る前に祖父のもとから済州島に住む両親のもとに移住。当時は日本の植民地統治下で、学校では朝鮮語ではなく日本語で話すことが強要され、朝鮮語を使うと、教師の激しいビンタ(平手打ち)がまっていた。「天皇の赤子になれ」と教育された時鐘は、特攻隊員にさえ志願する「皇国少年」として育った。
父親は読書家で、多くの蔵書のなかには、革張りで金箔文字がうってある『トルストイ全集』があり、印象に残っているという。定職にはつかず、韓服をまとい毎日のように釣りに興じる人物だった。済州港の突堤で父の膝の上に座り、朝鮮語の歌詞で唄われる「いとしのクレメンタイン」(米国民謡)をよく聴かされた。
16歳のときに終戦を迎える。町中に「万歳(マンセー)、万歳」という叫びが響きわたるなか、「自分だけが何か場違いのような気がしてならなかった」。日本に同化していた自分が、朝鮮の人間であることを突きつけられた瞬間でもあった。
涙があふれた。済州島の海辺で繰り返し「海ゆかば」や「夕やけ小やけ」を口ずさんだ。そして、それからは必死で韓国語を覚えるようになった。
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July 04, 2020 at 04:16PM
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朝鮮戦争への「協力」に抵抗した在日コリアンの挫折 - 徳山喜雄|論座 - 朝日新聞社の言論サイト - 論座
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