ヤマトホールディングス(HD)は23日、2021年4月に純粋持ち株会社から事業会社に移行する構造改革プランを発表した。傘下の宅配便最大手、ヤマト運輸などを事業ごとに再編する。ヤマトは、宅配ドライバーの待遇改善を目的に17年に料金を値上げして取り扱い荷物を抑制する方針に転換した。だが、足元では最終赤字に転じるなど思惑は外れており、事業再編によるコスト削減などで立て直しを図る。
「働き方とデリバリーの構造改革は一定の成果があったが、社会環境の変化が改革を上回っている。危機感を持っている」。東京都内で記者会見した長尾裕社長は、そう説明した。
ヤマトHDは17年、インターネット通販の増加に伴う人手不足や再配達などドライバーの負担増を理由に、業界を主導する形で個人向け基本運賃を値上げ。アマゾンなど大口法人にも値上げを要請し、貨物の取扱量を抑制する方針を打ち出した。18年以降、売り上げが増えるとともに収益も改善した。
だが、19年春からは再び貨物の取扱量を増やす方針にかじを切ったものの、値上げで一度離れた大口客が戻らず、19年度の4~12月の取扱量は前年割れ。売り上げが伸び悩むなか人件費などコストの増加が重しとなり、19年9月中間連結決算では、34億円の最終(当期)赤字を計上した。
長尾氏は値上げによる客離れは認めつつも、「サービス内容に応じた適切な価格設定があってしかるべきだ」と値下げによる拡大は否定。引き続き「働き方改革」を進めつつ、組織再編やIT化による効率化で乗り切る構えを示した。
組織再編は、ヤマト運輸など8社の子会社をヤマトHDが吸収合併し、機能別に4事業本部などに再編。経営の一体化で意思決定を迅速にするとともに、事務部門や拠点の削減でコスト圧縮を図る。IT化では、23年度までの4年間で1000億円を投資。人工知能(AI)を活用して業務量を予測し、人員配置や配車、配送ルートを効率化するほか、倉庫での荷物の仕分け作業の自動化も進める。また、荷物を受け取る時間や場所などをより柔軟に設定できる電子商取引(EC)向けの新たな配送サービスの導入も目指す。
今回の改革で、24年3月期に連結で売上高2兆円、営業利益1200億円以上を目指す方針だ。だが、現在の中期経営計画(3カ年)では最終年となる20年3月期の連結営業利益620億円の目標を掲げたものの、達成は厳しい状況。アマゾンが中小の配送業者を束ねて配送網整備に乗り出すなどヤマトの穴を埋めるような動きも出始めており、先行きは見通せない。【石田宗久、深津誠】
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2020-01-23 12:12:55Z
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