開発途上国への協力隊派遣や資金援助に取り組む国際協力機構(JICA)の海外協力隊員として、福西真実さん(33)は2年間、インドの学生に日本語を教えた。帰国後、JICAの国際協力推進員として、活動の思い出やJICAについて奈良県内の学生らに紹介している。
大和高田市出身。小学5年のとき、ストリートチルドレンの存在をテレビで知った。教育が受けられず、施設に入ってもいじめなどが原因で路上に戻ってくる。自分の生活環境との違いに驚き、何もできないことに歯がゆさを覚えた。教育の面で役に立てないか、考え始めた。
JICAとの出会いは中学生のとき。読んでいた本の中で「海外協力隊」の文字を目にした。調べてみると、JICAの海外協力隊員に日本語教師としての派遣枠があることを知った。「私はこれがやりたかった」。将来の道筋が見えた瞬間だった。
大学では文学部で日本語教授法を学び、4年生の時、1年間フランスに交換留学。現地で日本語教育を学んだ。長期休みにはバックパッカーとしてヨーロッパの国々を回った。「世界を知るたびに、その国のよさや、自分の知識不足を実感しました」
2011年に大学を卒業し、フランスで知り合った人の紹介で、カナダ・バンクーバーの日本語学校で1年3カ月の間、子どもから社会人に向けた日本語指導にあたった。帰国後には保育士の資格を取得し、16年の春、海外協力隊に応募した。
協力隊の派遣国は、受け入れ国の要請内容を踏まえた上で、隊員側が希望を出すことができる。福西さんは、日本語教師の枠があるインドに派遣希望を出し、審査を通過。同年夏にインドへの派遣が決まった。
「誰かの役に立てる場ができた」とうれしい気持ちでいっぱいだった。
派遣されたのは、ニューデリーのムニ・インターナショナルスクール。日本の小学1年~高校1年までにあたる児童・生徒約600人が通う私立の学校だった。月~土曜日、1日5コマの授業を担当。日本語が必修の小学校1年~4年生までと、日本語の学習を希望する5年生以上、約450人に対して授業をした。
小4までの低学年に向けては、ひらがなや発音、日本の文化について指導。小5以上の児童・生徒には漢字や文法の指導をした。心がけたのは学生たちが日本語をアウトプットする場を設けること。「学習のモチベーションにもつながると考えました」
派遣2年目には合唱祭を企画。「手のひらを太陽に」「おもちゃのチャチャチャ」など児童・生徒らが選んだ日本の歌を練習し、学校の先生やインド在住の日本人に発表する場を設けた。
同校では音楽の授業がなく、歌を歌うことに戸惑いがある生徒もいたが、徐々に声や音程をそろえて歌えるようになった。自信を持って歌う子どもたちの姿に「心が震えました」と振り返る。
2年間の任期を終えて帰国後、活動について報告する中で、JICAがあまり知られていないことに気づいた。振り返れば、自分が子どもの頃も国際交流や国際協力についての学びが少なかった。
そのため、21年2月、国際協力推進員に就き、インドでの活動やJICAの取り組みについて県内の学生などに紹介している。これまでに小学校~大学まで計約10カ所で講演した。協力隊派遣国について周知する展示会の企画運営なども担う。
「世界を知るきっかけのひとつになれたらいいな」(浅田朋範)
からの記事と詳細 ( JICA国際協力推進員 福西真実さん:朝日新聞デジタル - 朝日新聞デジタル )
https://ift.tt/Y9t50aW
No comments:
Post a Comment