経団連は10月31日、東京・大手町の経団連会館で開発協力推進委員会(安永竜夫委員長、遠藤信博委員長)を開催した。外務省の遠藤和也国際協力局長から、開発協力大綱の改定について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
■ 近年の情勢変化
2015年2月に現行の開発協力大綱が策定されて以来、国際情勢は大きく変化している。例えば、持続可能な開発目標(SDGs)の採択、気候変動に関するパリ協定の発効など、国際的な協力を通じて地球規模課題に取り組む動きが進展している。他方、一部でグローバル化に逆行する動きもみられる。経済と安全保障が直結し各国に影響を及ぼすなど、国際社会は複雑な国家間競争の時代に入っている。普遍的価値に基づく国際秩序は厳しい挑戦を受けており、自由で開かれたインド太平洋(FOIP)の理念の具体化が緊要である。
国際情勢が不確実性を増すなか、開発途上国は安定的な発展を見通すことが困難になり、人々の生存・生活・尊厳を確保するという「人間の安全保障」の理念に沿った対応が急務となっている。加えて、気候変動等に関し、民間セクターや市民社会の取り組みが圧倒的に増加するなど、開発協力をめぐる官民の役割分担が変化している。
■ 大綱改定の必要性と新たな方向性
こうした状況下、わが国が引き続き国際社会の期待と信頼に応え、自らの平和と繁栄を確保していくためには、外交力のさらなる強化が不可欠である。外交の最重要ツールの一つであるODAの一層の活用に向け、開発協力大綱を改定し、ODAが果たすべき役割を明確にするとともに、情勢の変化に応じた新たな方向性を示すことが必要となっている。
その例として、第1は、平和の土台・普遍的価値の再構築および次の時代の新しい国際秩序づくりへの貢献である。国際秩序への挑戦に対応するため、連結性強化や海洋安全保障などの分野において、開発協力を通じてFOIPの理念をさらに推進する。第2は、世界と日本が共に繁栄する環境を構築することである。コロナ禍等を受けた経済・社会の脆弱性に対応するため、各国の自律性強化など経済安全保障に資する開発協力を推進するとともに、ビジネス実証化支援など日本企業の海外展開支援に取り組む。第3は、新たな時代における人間の安全保障の推進である。地球規模課題の複雑化・深刻化に対応すべく、貧困削減、保健、気候変動などに関する国際的な取り組みを主導する。
■ 具体的な論点をめぐり有識者会議で議論
こうした方向性を踏まえ、22年9月、林芳正外務大臣のもとに「開発協力大綱の改定に関する有識者懇談会」を設置し、議論を進めている。
具体的な論点として、(1)ODAの戦略性の一層の強化のあり方(2)民間セクターやNGOをはじめとする市民社会ならびに大学・研究機関等との連携・支援の迅速化方策(3)支援手法の柔軟化・効率化(4)日本の信頼と強みを活かした顔の見える支援(5)開発協力のアウトカム(成果・効果)・実施基盤(資金的・人的資源等)(6)ODAの実施上の原則――などを挙げている。
経済界から市民社会まで幅広い関係者の意見を聴きながら、23年前半を目途に新たな開発協力大綱を策定する予定である。
【国際協力本部】
からの記事と詳細 ( 開発協力大綱改定に向けた検討状況 (2022年11月24日 No.3568) | 週刊 経団連タイムス - 日本経済団体連合会 )
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