- 共通の歴史・地理・政治がサウジアラビア人とヨルダン人を結びつけている。サウジアラビアとの関係は極めて重要だとヨルダン人は言う
- サウジアラビアはヨルダンにとって最大の貿易相手国であり、ヨルダンは毎年何十億ドルもの送金、投資、直接支援をサウジアラビアから受けている
ラエド・オマリ
アンマン:サウジアラビアとヨルダンの長年にわたる関係は、両王国が地域およびアラブ全体の協力の「ロールモデル」となっていく物語で、政治経済分野でのいくつかの新たな取り組みによって強化されることが期待されると、専門家は言う。
ムハンマド・ビン・サルマン皇太子殿下の近日中のヨルダン訪問に先立って観測筋が指摘するのは、外交関係にも影響を与えてきた、両国の国民の間の長く共有された歴史や類似した文化・価値観だ。
「ヨルダンとサウジアラビアの関係を表現するには外交という言葉はふさわしくない。それは、歴史であり、地理であり、政治であり、共通の利害だ」と、ヨルダンの元メディア担当相サミー・マアイタ氏は言う。
マアイタ氏はアラブニュースへのコメントで、「主に類似した政治・統治システムなどの多くの事実」のおかげで、両国は地域協力と協調の「ロールモデル」になったと説明した。
多作な著述家であるマアイタ氏は、パレスチナ、イラン、イラク、シリア、イエメンなどに関する地域的・国際的問題に対して、両国は長い間類似した政治的アプローチを採用してきたと説明する。それにはテロや「最近は(シリアからの)不法な麻薬密輸」への対策も含まれる。
「ヨルダンの安定はサウジアラビアにとってまさに利益であり、サウジアラビアの強さはヨルダンの利益の中心にある。両国の持続的な戦略的パートナーシップは最優先事項であり、妥協や犠牲は不可能だ。両国の指導者はそのことを十分に認識しており、それに従って行動している」
ヨルダンの戦略アナリストで大学教授のアメル・サバイレ氏は、マアイタ氏の発言に同意しながら、関係の進展を歓迎し、政治的協力・協調の強化を求める。
サバイレ氏はアラブニュースに対し、ヨルダンは「サウジアラビアの新たなビジョン(2030)と、指導者による地域全体のための野心的な計画」における役割を引き受けなければならないと語る。
「サウジアラビアは中東地域全体のための進歩的で野心的な戦略ビジョンを持っており、ヨルダンはサウジの皇太子殿下のアンマン訪問を是非とも生かす必要がある」
「両国の継続的な協力・協調は、地域全体の利益となる」と同氏は続ける。
ヨルダンにとってサウジアラビアは最大の経済パートナーであり、130億ドル以上の投資を受けている。両国間の貿易は2021年には50億ドルに達した。
世界銀行によると、ヨルダンにとってサウジアラビアは最大の援助国であり、ヨルダンのGDPの約8%に相当する30億ドルの直接経済支援を提供している。
サウジアラビアは今年4月、5000万ドルの直接支援をヨルダンに送ったが、これは約束した5回のうちの4回目だ。サウジ通信によると、この支援は2018年にサウジアラビア、クウェート、UAEの間で結ばれた、ヨルダンに25億ドルの経済支援パッケージを提供するという協定の一環だ。
サウジ公的投資基金が支援するサウジ・ヨルダン投資ファンド(SJIF)は最近、ヨルダンの医療施設に4億ドルを投資する協定を同国と結んだ。
このプロジェクトはサウジからヨルダンへの投資の「集大成」と表現されている。
ヨルダンのビシェル・ハサーウネ首相は調印式において、両国の指導者が根強い関係にあることを強調し、あらゆる分野における協力の強化を求めた。
サウジアラビアのナイフ・ビン・バンダル・アル・スダイリ駐ヨルダン大使はこの見解を支持しつつ、ヨルダンとの関係を強化したい意向を示した。
SJIFのヒシャム・アタル会長は、両国の指導者のビジョンを反映させつつ、同ファンドの主要な目標は重要な戦略部門に対する長期的な投資を通してヨルダンの経済成長に貢献することであると説明した。
同会長はまた、サウジビジョン2030の目標と、経済的統合をさらに促進するためのサウジ公的投資基金の戦略を強調した。SJIFはヨルダンに対する最も影響力のある投資機関になることを目指しているという。
SJIFと、ヨルダン投資ファンドが代表するヨルダン政府は、6月16日、SJIFが国営鉄道ネットワークプロジェクトへの投資機会を探ることを可能にする基本合意書に署名した。
SJIFの声明によると、このプロジェクトは、コンテナ、リン鉱石、穀物、自動車の輸送に使われる、アカバ・コンテナターミナルとアンマン南部のマドウナ・ランドポートを結ぶ418キロメートルの鉄道の建設を伴う。
SJIFは2021年6月、資本成長投資戦略の一環として、ヨルダンの大手テクノロジー企業OpenSooq(消費者間取引を可能にするeコマースモバイルアプリ)に対する1500万ドルの投資を発表した。
その時のSJIFの発表によると、この投資はヨルダンの起業環境を強化することで、国内企業の発展を支援し、それらの企業に地域展開の機会を提供することを目指したものだ。
今年3月には、10億ドル以上の規模になると見られる二国間協定がメッカとアンマンのビジネスリーダーらによって結ばれた。
ヨルダンのユセフ・マフムード・アル・シャマリ産業貿易供給相は、メッカ商工会議所とアンマン商工会議所の間で行われた調印式に参加してこう述べた。「この関係を10億ドルを超えるまで強化する必要がある。アンマンはサウジの商品に満足しており、サウジの投資はヨルダンにおいて最も重要であるから、なおさらそうだ」
ヨルダンのハシェミット大学の政治学教授であるジャマル・シャラビ氏は、サウジアラビアはヨルダンとの経済協力を「現金支援から、サービスやインフラのプロジェクトへの直接投資に」シフトしてきたと説明する。
同氏は、「これは非常に賢明で、より持続可能であり、雇用創出と経済成長加速に直接の影響がある」と、4月にハシェミット大学で行われたヨルダン建国100周年記念式典の際に述べた。
公式データによると、約43万人のヨルダン人がサウジアラビアで働いている。
サウジアラビアからヨルダンへの送金は2022年1~4月は1640万ドル増の11億ドルで、前年同期比1.5%増となった。
ヨルダン中央銀行のデータによると、これらの送金は2021年末には合計34億ドルに達した。国外居住ヨルダン人からの送金の大半は湾岸諸国、特にサウジアラビアからのものだ。
ヨルダン大学戦略研究センターが3月に実施した世論調査により、ヨルダン人が「サウジアラビアとの制度化された関係」を自国の最優先事項と見なしていることが明らかとなった。
同調査では、37%のヨルダン人が、サウジアラビアを自国にとって最大の経済的・政治的支援国であり「文化的にも伝統的にも最も近い隣国」であると見なしていることも分かった。
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