【シリコンバレー=奥平和行】ロシア軍の侵攻を受けているウクライナがサイバー空間でロシアに対する包囲網を築く動きを強めている。グーグルなどの米IT(情報技術)大手にロシアでサービスの提供を中止するように要請した。ただ、締め付けが強まるとロシア国内の反体制派などへの逆風になりかねず、先行きは不透明だ。
「2022年現在、テクノロジーは戦車やロケット砲、ミサイルに対する最良の回答のひとつになっている」。デジタル転換相を兼務するウクライナのフョードロフ副首相は26日、ツイッターを通じて訴えた。
フョードロフ氏は同日、グーグルやメタ(旧フェイスブック)、ネットフリックスなどにロシア国内でのサービスを停止するように要請したと明らかにした。25日には米アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)に書簡を送り、同様の対応を求めている。
グーグルとアップルのアプリストアなどロシアで人気が高いサービスを使えなくすることにより、「若年層に(政府に対する)活動を促す」(フョードロフ氏)という。グーグルに対しては同社傘下の動画共有サービス、ユーチューブからロシアの国営メディアを締め出すことも要請。プロパガンダを止めることを狙っている。
プロパガンダの抑止ではメタとツイッターが25日、両社の運営するサービスを通じてロシアの国営メディアが広告を出すことを世界で禁じると表明した。メタはロシア当局の命令を拒否して国営メディアなどの投稿に対する規制を続ける考えも示しており、ウクライナ側の希望に沿った対応となる。
ロシア当局は両社の対応が市民の権利などを保護する連邦法に違反するとしており、25日には通信速度を低下させて同国でメタが運営するフェイスブックにアクセスしづらくする対抗措置を講じた。英インターネット監視機関のネットブロックスによると、ツイッターも26日にロシアで使いづらい状態になった。
ただ、IT大手がアプリストアや動画配信サービスの提供中止といった、一般市民を巻き込む形の対応に踏み切るかは不透明だ。バイデン米政権は24日、半導体やセンサーといったハイテク製品のロシアへの輸出を規制した。一方、市民への影響を懸念し、スマートフォンなどは対象から外した経緯がある。
ウクライナ側は政府を上回る水準の「制裁」を民間企業に求めた格好になる。各社が要請に応じることで「ネットに親しんだ若年層の反政府活動を促す」との見方がある。各社は独占・寡占問題への対応や利用者のプライバシー保護が課題となるなか「良き企業市民」としての打ち出しを強めており、こうした流れにも合致する。
一方、米カリフォルニア大学のデービッド・カイエ教授は「抗議活動のツールが使えなくなる」などと指摘する。また、各社がロシアの報復の対象になり、サイバー攻撃にさらされるリスクも一段と高まる。ウクライナ側の要請はデジタル時代ならではの戦法といえるが、副作用も大きいもろ刃の剣だ。
各社は要請への対応方針を明らかにしていない。グーグルとアップルの広報担当者は日本経済新聞の問い合わせに回答しなかった。要請に応じても拒否しても、大きな反響があることは間違いない。ウクライナをめぐる情勢が緊迫するなか、「影響力が国家を上回る」と言われるようになったIT大手は難しい判断を迫られることになる。
からの記事と詳細 ( ウクライナ「サイバー包囲網」築く Googleに協力要請 - 日本経済新聞 )
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