
大規模災害に備えて個人宅の井戸を「災害時協力井戸」として整備する取り組みが、東日本、阪神淡路大震災の被災地をはじめとする全国各地で進んでいる。藤枝市は来年度、県内で先駆けて井戸の登録制度を開始予定。水道管の破損などで断水が起きた際、住民同士で協力して生活用水の確保につなげることが期待される。
「畑の水やりや野菜を洗うのに使っているよ」。藤枝市西部の一里山地区。自宅の庭に井戸がある山内清子さん(74)がレバーを動かすと、水が勢い良く放出された。同地区には個人の井戸が少なくとも3カ所にあるという。近くでそば店を営む町内会長の鈴木幸男さん(72)も所有していて、「困った時は地域で助け合いたい。そのための制度づくりや井戸を維持するための支援を行政が進めてくれたら」と語る。
大規模災害でインフラが寸断された場合、水道の復旧は電気などに比べて時間を要することが多い。静岡県内では伊豆半島に上陸した2019年の台風19号で、熱海市や函南町内で1週間ほど断水が続いた。
東日本大震災の被災地では、断水時に井戸水を風呂や洗濯、清掃など飲用以外で利用した事例が確認されている。井戸の登録制度は大阪府のほか、京都府や千葉県などの自治体が導入している。一方、県内ではほとんど取り組みが進んでいないのが現状だ。
藤枝市は今後、市内の井戸の総数や設置場所、管理状態を確認する作業に入る。登録井戸の管理者に維持や水質検査の費用を補助するほか、設置場所を示す地図や看板の作成も目指す。市地域防災課の担当者は「まずは設置状況の把握に努める。災害時の混乱した状況下で、井戸水が地域住民を支えるような仕組みを構築したい」と話した。
■被災の仙台 利用多数
東日本大震災で被災した仙台市では、断水地域で井戸水を生活用水に役立てたケースが多数あった。現在は電動ポンプ式が多いものの、電気の復旧後はくみ上げ機能が復活する井戸が大半で、災害に耐えるだけの強度が示された。
同市は2000年に井戸の登録制度を始めた。市環境対策課によると、震災発生時には200軒ほどの協力井戸があった。断水した地域への聞き取り調査では、回答があった106軒のうち、8割近い84軒が井戸水を利用した。うち58軒ほどが家族以外にも提供していたという。
一方で人口が多い都市部ほど設置数が少なく、井戸の活用は郊外の一部地域にとどまった。同課の担当者は「個人所有なので、(マップでの設置場所公開など)大々的な情報発信は難しい」と指摘しながらも、より広い活用に向けて確保数の増加や周知を図るための手法を検討していくとした。(藤枝支局・岩下勝哉)
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