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Saturday, January 30, 2021

コロナ法改正審議 罰則より協力促す政策を | 熊本日日新聞社 - 熊本日日新聞

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 新型コロナウイルス感染拡大に対応する特別措置法と感染症法の改正案が、29日の衆院本会議で審議入りした。自民、立憲民主両党による事前の修正協議で、当初の政府案に盛り込まれていた入院拒否などへの刑事罰は全て削除されたものの、行政罰である過料は残った。

 行政罰であっても、違反者を罰することに変わりはない。医療の受け入れ態勢も、営業の時短要請などに応じた事業者への支援も十分とは言えない現状を考えれば、罰則の導入はバランスを欠く。

 菅義偉首相は「感染対策の実効性を高めるために必要な見直し」と強調する。だが、罰則による強制は検査拒否などを招く恐れがあり、感染症の封じ込めにつながるのか疑問が残る。必要なのは国民が納得し、積極的に協力できる政策だろう。国会では、さらなる修正も視野に議論を尽くすべきだ。

 感染症法の政府案には、入院拒否者に対し「1年以下の懲役か100万円以下の罰金」を科す刑事罰が盛り込まれていた。患者らの人権尊重を掲げた同法の基本理念に反するもので、削除は当然の判断である。

 代わりに行政罰の「50万円以下の過料」を科す。疫学調査拒否者への「50万円以下の罰金」も「30万円以下の過料」に修正した。

 しかし、そもそも罰則導入の根拠となる「立法事実」が示されていないという問題がある。厚生労働省は、入院や調査を拒んだ具体例を現在調査中というが、順序が逆ではないか。

 改正案には、医学系の学会や保健師らの団体が相次いで罰則導入への反対を表明した。最前線で対応する全国保健所長会は「罰則を振りかざした脅しで住民の私権を制限することになれば、住民と信頼関係を築くことは困難になる」と、知事会とは立場を異にする意見書を厚労省に提出した。重く受け止めるべきだろう。

 厚労省が15日に開いた専門部会でも、罰則導入に慎重、反対意見が多数を占めていたことが、審議入り直前に判明した。なぜ、こうした声を伏せたまま罰則導入に至ったのか、政府はきちんと説明する責任がある。

 特措法改正案では、緊急事態宣言時に時短営業などの要請に応じない事業者に対し、都道府県知事が「命令」を出せると規定。拒めば過料を科すことができる。さらに、緊急事態宣言の前段階となる「まん延防止等重点措置」を新設し、知事に緊急事態と同様の権限を与えた。

 宣言下でも「要請」や「指示」にとどまっていた知事の権限が、大幅に強化される大転換である。政府は重点措置について、特定の地域と業種に絞って実施するとしているが、要件が不明確なままでは恣意[しい]的に運用されかねない。一方で、事業者が求めている実際の損害に応じた補償も義務付けていない。週明けから本格化する国会審議では、こうした問題点を一つ一つ吟味し、重点措置は必要なのか明らかにしてもらいたい。

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