「この映画は『傑作』というぴったりな言葉で総括できる」(ウォール・ストリート・ジャーナル紙)
妻を亡くした男が、寡黙なドライバーとの交流を通じ、少しずつ前を向くーー。ヒューマンドラマをつつましやかに描いた日本映画に、海外から惜しみない称賛の声が寄せられている。
村上春樹(73)の小説をもとに、濱口竜介監督(43)が西島秀俊(50)主演で実写映画化した『ドライブ・マイ・カー』。脇を固めるのは三浦透子と霧島れいかだ。
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昨年8月に公開された本作は、国際的な映画賞を次々と受賞し、2月8日には、第94回米アカデミー賞の候補作として、日本初の作品賞など計4部門にノミネートされた。
「カンヌ映画祭やベネチア映画祭と違い、アカデミー賞はアメリカ映画業界の総意。そこで作品賞にノミネートされるというのは、まさに快挙です」(映画評論家・前田有一氏)
ロケ地となった広島からは多くの喜びの声が上がる。
「休憩所として利用していただきました。西島さんにうどんとおにぎりを手渡したら、『ありがとうございます』とニコッと笑ってくれました」(クアハウス湯の山担当者)
「映画『この世界の片隅に』でも舞台になり、“聖地巡礼” 効果がすごかったので、アカデミー賞にも期待しています」(おりづるタワー担当者)
ロケ地にある各施設での撮影は、それぞれわずか数日程度。「制作費は約1億円」(業界関係者)という低予算の映画がつかんだ、奇跡のアメリカンドリームかと思いきや……。
「いやいや、してやったりなんですよ」と語るのは、作品を制作したC&Iエンタテインメントの別のプロデューサーだ。
「この作品は企画の立ち上げから『本気でアカデミー賞を狙う』というものでした。主演の西島さんにも当然そういう趣旨で声をかけています。村上春樹さんを原作に選んだのも世界的な評価を受けやすいと考えたから。
加えて、全米各地で問題となった『コロナの発生源』としてアジア人が差別されていた逆風も、“チャンス” だと判断しました。なぜなら、アカデミー賞は近年『白人の受賞者が多すぎる』とリベラル勢から猛烈な批判を受けて、黒人やアジア系の演者や作品をフォーカスしようとしています。
実際、昨年の作品賞を受賞した『ノマドランド』の監督は中国人女性でした。反差別という観点からも選ばれやすいと考えたのです。
さらなる野望もあります。韓国映画『パラサイト 半地下の家族』は、ハリウッドの映画会社にリメイク権を30億円程度で売ったそう。本作も業界関係者からの評価を高め、ハリウッドでリメイク権を売りたいと考えています」
アカデミー賞は、業界関係者の投票で決まる。当然、なるべく多くの劇場で公開され、多くの業界人に足を運んでもらう必要がある。
「じつは粗編集をした段階で、ラストシーン抜きですでに3時間以上の大作だったんです。今は1時間半程度の映画が主流の時代。このままでは上映してくれる劇場が激減してしまうので、なんとか編集して2時間59分まで削ったそうですよ」(別の映画業界関係者)
作品へのこだわりは残しつつ、業界人から広く支持を集めアカデミー賞を目指す。まさに狙いが的中した形だが、「作品賞の受賞自体は厳しいのでは」と前田氏は語る。
「多様性という世界的な流行にも乗っているし、作品としても上質な内容で、観ればおもしろいんです。でも売りどころが難しい。結局、作品賞は一般の観客も巻き込んで盛り上がらないといけませんからね。応援はしていますが……」
本作は各地でロングラン上映中だ。制作陣の野望を助けてみては?
(週刊FLASH 2022年3月1日号)からの記事と詳細 ( ドライブ・マイ・カーは初めから「アカデミー賞」を狙っていた!「上映時間」「アジアに注目」の潮流に目つけ | Smart FLASH[光文社週刊誌] - SmartFLASH )
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