作家Fの同名小説を原作にKing & Princeの永瀬廉主演で映画化した『真夜中乙女戦争』(2022年1月21日公開)。MOVIE WALKER PRESSプレゼンツ『真夜中乙女戦争』独占試写会が12月23日に神楽座で開催され、二宮健監督が登壇しティーチインを行った。
本作は、平凡で退屈な日々を送る青年の日常が、“先輩”や“謎の男”との出会いをきっかけに、自分自身と東京を破壊するまでの夜と恋と戦争を描く物語。主人公の無気力な大学生“私”を永瀬が演じ、聡明な“先輩”役には池田エライザ、謎の男“黒服”には柄本佑が扮している。
カメラの動きがおもしろいという感想から、映像へのこだわりについて質問されると「今回は撮影と音楽を堤裕介が担当しています」と回答した二宮監督。本業が音楽家である堤が本作で初めて映画の現場に参加したことに触れ、「彼の撮る映像が大好きなので、『真夜中乙女戦争』の世界観に招きたかった」と依頼理由を明かした。商業映画の撮影では初めてタッグを組む時でも、事前にたくさん話し合う機会がないことも多いと前置きし、「今回は、とにかく話をしました。試行錯誤しながらも、撮影の工夫はかなり仕込んであるので、カメラワークへの感想はとてもうれしいです」とニッコリ。「繊細な細い線を紡ぐような物語なので、言葉に表せないような細い眼差しが入るといいなという思いを映像に込めました」と明かしていた。
最後のシーンに込めた思いについて訊かれると「原作も同じ一言で終わります」とコメント。「いい意味で混沌としている」と原作の感想を伝え、「紙の本で読んでいると、残りのページ数が分かりますよね。読み進めながら“本当に残りのページで物語が終わるの?”という思いが湧いてきました。最後の最後まで話が転がってから、あの一言が飛びだします。理屈じゃないなにかがグサッときた瞬間でした」と臨場感あふれる解説をし、「あの一言を、映画でどう響かせるかを考えました」とコメント。劇中には2回登場したセリフだとし、「立ち上がる感情の違いを感じ取ってほしいです」と呼びかけた。
「その後、永瀬演じる“私”がどうなったと思うか」という質問に対しては「廉くんの表情に出ていると思います」とキッパリ。その後どうなったとしても、僕らは彼を肯定してあげたい、そんな気持ちを込めて撮影したシーンであるとも付け加えた。
「死んだ魚の目をした廉くんが観れてよかったです。廉くんの起用理由を教えてください」というファンの言葉には「雑誌のインタビューで答えたので、そちらでぜひ読んでください!」としっかり宣伝する場面も。作品に込めた想いについては「一言では言えない」としながらも、「映画を観た人の目にどう映るかはわからないけれど、僕としては映画に希望と、背中を押したいという思いを込めました」と力強く語った。
劇中ではエドワード・ノートンとブラッド・ピットが共演し、デヴィッド・フィンチャーが監督した『ファイト・クラブ』(99)が象徴的に登場する。“ジェネレーションX”の金字塔としていまも根強いファンを持つ名作だ。原作に登場する作品なので映画化するにあたり描かないわけにはいかないと前置きし、「あまりにも偉大な映画です。1999年製作のこの映画への、20年後のアンサーをどうすべきかという気持ちで挑みました。『真夜中乙女戦争』きっかけに、まだ観たことのない若い人たちにも、『ファイト・クラブ』というすばらしい映画を知ってほしいです」と呼びかけた。
ティーチインでは、劇中に一瞬だけ登場するコロナ禍を彷彿とさせる「マスク」のシーンが印象に残るという感想がいくつかあがった。コロナ禍を描くことについては「描かない選択肢もあった」と前置きしつながらも「『真夜中乙女戦争』が2021年に製作され、2022年に公開される映画であることは揺るぎない事実。撮影延期になったタイミングで、いろいろ考えたけれど、今回の描写に着地しました。自分の世界に照らし合わせてほしい、いま生きている世界を反芻してほしい、そんな願いが込められています」と、マスクシーンが誕生した経緯と思いを伝えた。
思い出に残るシーンはたくさんあるとしながらも、個人的に好きなのは「“私”と“黒服”がグラサンをかけて廊下を歩くだけのシーン」と回答。「何度観てもニヤニヤしちゃいます。残念ながら予告には入れてもらえませんでしたが」と残念がる場面もあった。作中では「目線」がポイントになっていると感じたという感想には「僕にとって“見る”という行為は特別です」と強調し、量子力学を例にあげ、眼差しや視線、目線の持つ意味などを解説しつつ、「余白を残したので、いろいろと感じ取ってほしいです」と伝えていた。
永瀬ファンからの「間違いなく新しい永瀬廉を感じることができました」との感想に笑顔を浮かべながらお礼した二宮監督。「再び永瀬とタッグを組むとしたら、どのような役を演じてほしいか」という質問に対して「まずは『真夜中乙女戦争』を経て、自分以外の監督のもとでどんな姿を見せてくれるのかをすごく楽しみにしています」と語り、ティーチインを締めくくった。
取材・文/タナカシノブ
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