日中関係に暗雲が垂れ込めている。5月以降、中国は香港問題で強硬措置を取っただけでなく、領土を主張する南シナ海、東シナ海、中印国境で現状変更を試みてきた。これに日本側は警戒認識を強め、米豪印など関係国との協力強化を探る。また米中対立は一層厳しくなり、先端技術に関わる経済分野では二者択一を迫られるリスクが高まっている。国際情勢が流動化する中で、日本は中国との協力をどのように進めるべきか。(アジア経済研究所・江藤名保子)
難しい「主席歓迎」
「新しい時代の日中関係」を旗印に改善基調にあった日中関係は、急速にトーンダウンしている。本来ならば4月の習近平国家主席の国賓来日がメルクマールとなり、「新時代」の協力関係が示されるはずだった。だが3月上旬に新型コロナウイルス感染症対応を理由として習主席来日延期が決定、6月3日に日本側は「具体的な日程調整をする段階にない」(茂木敏充外相や菅義偉官房長官の発言)と認識するまで後退した。自民党が7月に発した香港国家安全維持法(国安法)に対する非難決議では、党外交部会・外交調査会として国賓来日中止を要請した。
実のところ、習主席の国賓来日には昨年から慎重論があった。2019年に尖閣諸島周辺海域での中国公船の活動が活発化したことに加え、北海道大学教授の拘束問題を受けて邦人拘束への批判も再燃していた。安倍晋三政権はそれでも来日実現を志向してきたが、習政権のコロナ禍をめぐる硬直的対応や香港への強権的な措置に加え、5月上旬の中国公船による尖閣周辺での日本漁船追尾が明らかになり、国内の対中警戒感は一気に高まった。この問題で中国外務省報道官は「日本漁船の中国領海内の違法操業」を「中国海警局の船舶が法に従って」取り締まり、「現場での日本海上保安庁船舶の違法な干渉」にも対応したとする。このような「警察権行使」の主張は、中国の主権を既成事実化するための一方的措置である。中国は4月に南シナ海で新しい行政区を設定、インドとも軍事衝突するなど領土問題で実力行使に出ており、日本として習主席を歓迎することは難しい。
このように中国の強硬姿勢が鮮明になればなるほど、日中協調の機運は失われていく。この数年日本は、米中対立が悪化するなか米国と中国の間でバランスを取ってきた。それは多くの欧州諸国や東アジア諸国が共有する戦略でもあった。だがこの数カ月に日本、英国、オーストラリア、カナダ、インドなどの関係各国は米国側に傾いてきた。他方で国際社会を見渡せば、諸国の思惑は入り乱れる。例えば6月末の国連人権理事会では、香港国安法に反対する27カ国が共同声明で非難したのに対し、53カ国が中国への賛意を示す共同声明を発した。コロナ禍を受けて中国が掲げる「健康シルクロード」の医療支援に対しても、期待を寄せる国は少なくない。こうしたなかで構造的に日本の対中戦略を考えるならば、抑止を強めつつ一定の対話の維持を図ることが望ましい。
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August 03, 2020 at 03:00AM
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【中国を読む】国際情勢が流動化 「新時代」の日中協力の在り方は - SankeiBiz
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