東京に迫る感染爆発の危機を打開する展望
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(矢原 徹一:九州大学理学研究院教授)
「専門家の対策に根拠あり、新型コロナは制圧できる」(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/59778)と題する3月19日の記事で、3月6日以後は新規感染確認者数が横ばいであるというデータを示し、感染拡大を収束させる展望が出てきていると書きました。残念ながら私のこの展望は、3月25日に始まる東京での感染確認者の急増によって、修正を迫られました。
舛添要一氏は、3月28日の記事「外出自粛要請で都民の不安煽ってしまった小池都知事」(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/59928)で、25日の都内新規感染確認者「41人の内訳を見ると、病院でのクラスター感染者や海外からの帰国者を除いて、感染源の分からない患者は10~13人で、過度に騒ぎ立てることはない」と書かれていますが、この認識は適切ではありません。現時点で外出自粛を含む強力な行動抑制措置をとらなければ、感染爆発が起きる可能性が高まってます。強力な行動抑制措置をとったとしても、おそらく2週間程度は感染確認者の増加が続き、感染者が1000名を超えると予想されています。
いま東京は、欧米のような感染爆発を許すかどうかの瀬戸際にあります。しかし、感染爆発を阻止する展望は、まだあります。この展望を都民を含む全国民が共有し、危機から脱出するための協力行動をとる必要があります。
感染拡大が加速している
まず、危機の現状を認識しましょう。図は前の記事で示したグラフ(国内で新たに確認された感染者の推移)の改訂版です。
3月6日以後新規感染確認者数(縦軸)は増減を繰り返しつつ、ほぼ横ばいの状態で3月23日まで推移していました。この状況を維持できれば、感染者数はいずれ減り始めるはずでした。状況が変化したのは3月23日です。この日に、東京都の新規感染確認者数が16名と過去最高を記録しました。その後、17名、41名、47名、40名、63名、68名と推移しました。3月30日の新規感染確認者数は13名と大きく減りましたが、3月31日には78名と過去最高を記録しました。
前回の記事で紹介した「SIRモデル」(*)にもとづいて、現状を分析してみましょう。
(*)「S」はSusceptible(感受性者:ワクチンがない場合は非感染者とみなしてよい)、「I」はInfectious(感染性者:感染力のある感染者)、「R」はRemoved(除去者=病院に隔離された人+抗体を獲得して感染しなくなった人+死亡者)
3月23日に始まる新規感染確認者数の増加は、「感染者数I(t)の変化率 I’(t)」をあらわす方程式(前回記事参照)
I’(t) = bS(t)I(t) - cI(t)
における新規感染者数bS(t)I(t)が増えたことを示しています。
その結果、マイナスに転じつつあったI’(t)が、プラスに戻ってしまいました。I’(t)は、一種の加速度です。I’(t)がプラスなら、感染拡大は加速します。東京都に連動して、神奈川県・埼玉県・千葉県の新規感染確認者数も増えており、やはりI’(t)がプラスに振れた、つまり感染拡大が加速したと考えられます。
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