【アナハイム(米カリフォルニア州)9日(日本時間10日)=斎藤庸裕】エンゼルス大谷翔平投手(26)が、メジャーでは初めて母の日に打者として出場し、初打席で初安打を放った。ドジャース戦に「2番DH」で出場し、3打数1安打。第1打席で昨季サイ・ヤング賞投手のバウアーと対戦し、全力疾走で遊撃内野安打をもぎ取った。第2打席では2死一塁から四球を選び、2打席連続で出塁。その後、4番ウォルシュの逆転打につなげ、3連戦の勝ち越しに貢献した。

ピンク色の特製バットで、大谷は好投手バウアーの変化球に食らいついた。1回1死、追い込まれてからの3球目、内角低めに鋭く曲がったスライダーに反応した。スイングを止めかけたが、かろうじてバットに当て、遊撃へのゴロで全力疾走。ピンクの手袋とスパイクを動かし、懸命に走った。スプリントスピード毎秒30・3フィート(約9・2メートル)のエリート級の快足で、内野安打を勝ち取った。

母の日に、メジャーで初めて打席でバットを振った。1年目は投手としてマウンドに上がり、2年目はネクストバッターズサークルで代打待機していたが、直前で試合終了。3年目はコロナ禍で開幕が延期となっていた。そしてメジャー4年目、母の日の初打席で野球少年のような泥臭いヒットを放った。全力疾走は父徹さんの教えとして体に染みついていること。くしくも19年6月16日の父の日に打者で出場した際も、投手強襲の打球で懸命に走り、内野安打をもぎとった。

3回の攻撃前にはスタジアムの大型スクリーンに「母の日おめでとうございます」というメッセージとともに、幼少期に母加代子さんと撮影した写真が映し出された。2打席目はその3回、2死一塁からボール球を見極めて四球を選び、2打席連続で出塁。2死満塁から4番ウォルシュの2点適時二塁打で逆転のホームを踏んだ。この日は豪快な本塁打はなくとも、“つなぎ”の全力プレーで逆転勝ちに貢献した。

チームはドジャース3連戦に2勝1敗と勝ち越し。大谷は3打数1安打で4試合連続安打と10試合連続出塁をマークした。試合前にはブルペンで立ち投げを含めて25球、投球練習を行った。今季5度目の先発は11日(日本時間12日)、アストロズ3連戦の2戦目。同地区のライバルとの戦いへ向け、敵地へと乗り込む。

◆スプリントスピードは足の速さを示すMLB「スタットキャスト」の指標で、2017年から導入された。指標に換算される走塁ケースは2種類あり<1>本塁打と二塁に走者がいるケースを除き二塁打以上で走った場合、<2>強打またはボテボテの当たりでホームから一塁へ走った場合。これらの「走」のうち、最速を記録した1秒間に走った距離(フィート)がスプリントスピードの数値となる。MLBの選手は毎秒23フィート(約7・01メートル)から30フィート(約9・14メートル)の範囲に当てはまり、23フィートは「プア」、30フィートは「エリート」とされている。今季の平均スプリントスピードランキングでは、1位がナショナルズのターナー内野手で30・8。平均30超えは現在4人のみとごく一握りだ。